東京都(区も含む)における公共下水道工事には
・区が推進する >> R(リニューアル)工事
・主に未普及地域における >> 新設工事
・何かしらの不具合がある場合 >> 補修工事
・老朽化施設の更新 >> 再構築工事
・耐震化工事、他
が挙げられます。
今回はそれぞれの工事内容を説明する記事となります。
排水施設について
東京都下水道局HPより
各家庭から流れる汚水については、
お客様の土地の範囲にある排水設備 → お客様の財産
公私境界(官民境)より外 → 公共下水
に分けられます。
ここでは「公共下水」の工事の説明になります。
区が推進する R(リニューアル)工事
区が推進するR(リニューアル)工事とは、主に老朽化した道路や付随する側溝などをきれいに取り替える工事です。
道路の端にある側溝部にはフタのついたものがあり、雨水や各家庭からの汚水を接続する公共マスと呼ばれる部分になります(序章の排水設備参照)。
各家庭内にあるマスについては、マス部分で水と固形物を分離させる役割があります。
マス底部に固形物などが溜まり、上積みが公共下水に流れる仕組みです。
ここでの下水工事についてですが、各家庭よりつながる下水管の公私境界を越えた公共マス部分から、道路部にある下水本管につながる部分が「取付管」と呼ばれる部分になります。
この部分が「陶管」と呼ばれる古い管である場合、「塩ビ管」に取り替える工事を行います。
【陶管(とうかん)】
【塩ビ管(えんかびにるかん)】
これは雨水についても同様です。公共マスも老朽化している場合は交換します。
主に未普及地域における 新設工事
東京都下水道局HPより
未普及地域とは、下水道管がない地域になります。
要は昔ながらの「汲み取り式」ですね。
昔の方はご存じかと思いますが、各家庭の便所の下に汚物を溜めていくもので、臭いもハンパないですし、衛生上あまりよろしくないですね。
汚物が便所の下に溜まったらバキュームカーが吸取りにきます。
また、道路新設に伴うライフラインの新設時に施工する場合があります。
電気、ガス、水道、NTT等のライフラインは道路面より1m下程度に埋設されていますが、下水道管は更にその下2~4m付近に埋設します。
深い場所の施工になる為、危険度も大きく、掘った穴が崩れないように「山留め」と呼ばれる土を支えるものを設置して安全に配慮して施工していきます。
また、これら下水道管には塩ビ管、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)などがあります。
塩ビ管
塩ビ管はφ100~600㎜、ヒューム管(鉄筋コンクリート管)はφ150~3000㎜のサイズがあります。
サイズについては地域の汚水の流れる量を計算して決定していきます。
自然流下式と呼ばれる、自然に汚水がながれるように1mあたり3ミリ程度の勾配(傾き)をつけて、下水管を設置していきます。
何かしらの不具合がある場合 補修工事
ロードエスパー3D アイレック技研HPより
下水管に穴が開いて周辺の土が流入すると、道路陥没の原因になります。
それをレーダーにより調査する車両があります。よく都内では調査を見かける事が度々あります。
空洞が見受けられる場合は、その部分の下水道管を補修することになります。
また、水場の地域では、下水管は深く最初に設置することから、その後に下水管の上に設置した他ライフラインの構造物の重みなどにより、下水管が折れ曲がってしまう場合があります。
そのような場合も補修することになりますが、他ライフラインの整備完了後の施工は困難を極める為、施工する箇所のライフラインを切り回したり、特殊工法で施工する場合があります。
改築推進工
ケーシング立坑工
老朽化施設の更新 再構築工事
東京都下水道局HPより
東京都の下水道管は、今後、ますます老朽化が進みます。
老朽化した下水道管は、道路陥没の原因となることがあります。このため、老朽度の調査を行い、既存の下水道管をできるだけ有効利用しながら、更新にあわせて能力不足の解消などを図る再構築を推進します。
再構築工事は既存の下水管をできるだけ有効利用する点から、既存の下水管の内面を補修していく「管更生」という工事も行われます。
東京都は歴史が古いことから、下水管などのライフラインが網の目のようにあり、掘って取り替える事が難しい事が多く「管更生」で補修することが度々あります。
〈管更生前〉
〈管更生後〉
普通に掘って下水管を取りかえる工事もありますが、困難を極める状況も多々あります。
耐震化工事、他
下水道管路施設における耐震化技術の有効性 国土交通省HPより
地震による下水管の破損などに対応する施工方法も導入されています。
下水管については
・下水管のたるみ
・下水管の破損
・下水管の抜け
などが多くみたれた事から、通常は管を設置したあとは改良土などを埋戻しますが、管まわりを砕石やセメントを使って液状化に耐える施工方法が考案されています。
また、液状化によりマンホール(人孔)が浮き上がる被害が発生したことから、以下の工法が考案されています。
下水道管路施設における耐震化技術の有効性 国土交通省HPより
マンホールに重みやアンカーで固定することで浮上を阻止する方法や、液状化が発生した段階で水分をマンホール内に流入させ浮上を軽減させる方法がとられています。
マンホールと下水管の接続部の耐震化もすすめられており、マンホールや下水管が動いても管が抜けない構造に更新しています。
都市化の進展や集中豪雨の多発などにより、下水道が整備されている地域でも雨水排除能力が不足し、都市型水害が発生しています。
これらの地域で、下水道管やポンプ所の能力増強、雨水の貯留施設の設置など、1 時間 50 ㎜の降雨に対応できる施設を整備し、浸水被害の軽減を図ります。
シールド工事による大口径の貯留管設置、カルバートの設置により雨水受入れ能力の増強が行われています。
※貯留管とは、集中豪雨のときに雨水を一時的に貯めるための公共下水道管のことです。 集中豪雨などのように短期間で大雨が降った際には、現在道路の下などに埋設されている下水道管に流れる下水の量が増大し、既存の下水道管だけでは流しきれないという状況が生まれてしまいます。
まとめ
下水道工事の重要性がおわかり頂けたかと思います。
このように東京都では安心・安全な生活が送れるように下水道管の整備に日々努めています。
我々、現場監督や職人はその一翼を担っております。
正確な工事を完成させ、皆様の生活を守ってまいりたいと考えております。